事業再生の現場から

軍師の門 上・下

来年のNHK大河ドラマの主人公が「黒田官兵衛」に決まっているとかで、書店をハシゴすると何処の本屋さんでも「官兵衛」に関する本がヒラ積みです。

私も先日つい手が伸びて表題の本を買ってしまいました。

「軍師の門」上・下 火坂雅志著(角川文庫)です。

関白・太閤豊臣秀吉の謀臣として活躍した二人の軍師、竹中半兵衛と黒田官兵衛の活躍と心情の変遷を綴った物語でした。

火坂雅志氏と言えば、数年前これもNHK大河ドラマで一躍有名武将となった直江兼続を描いた秀作「天地人」で有名な作家ですが、戦国武将でもお決まりの「織田信長」や秀吉、「徳川家康」などの天下取りを目指した有力武将よりも、上杉家の宰相直江兼続や豊臣家の謀臣黒田官兵衛、後に大坂冬(夏)の陣で活躍する真田信繁(幸村)などに焦点を当て人物像を掘り返す作風が、私はとても気に入っています。

本作品では、若き小寺(黒田)官兵衛が秀吉の家臣となる以前に、これも秀吉の謀臣となる前の竹中半兵衛の山庵を訪ねたり、その旅路の途中で若き日の藤吉郎に出会ったりと、明らかにフィクションであろう事を幾つも散りばめていますが、大きな史実に沿った話の流れでとても読み易く、たちまち読み終えてしまいました。

ただ一点。これは安部龍太郎先生の藤堂高虎伝「下天を謀る」でも書きましたが、火坂先生の本書でも「石田三成」の評価が低く(これは豊臣野戦軍団側から見れば当然の評価なのでしょうけど…)、司馬遼太郎先生の「関ヶ原」で描かれた石田像とはあまりにかけ離れた評価で残念でなりません。

火坂先生には、是非一度石田三成を主人公にした作品を描いて頂きたいと思います。

隠居した後も、関ヶ原の天下分け目の決戦を横目に「草刈り場」となった九州の留守城を次々に落城させ独自の勢力圏を作り上げようとした野心と実力、それが志半ばで成就しないことを悟ってあっさりと手放した心根。

黒田官兵衛は、やはり後世に語り継がれる「傑人」であったのです。

 

 

 



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