事業再生の現場から

やるせない思い…介護事業者の憂鬱②

前回の続き

順序が逆になってしまいましたが、H氏は「サービス付高齢者向け住宅(サ高住)」と「デイサービス」、そして「訪問介護事業所」を経営しています。

近年「老人介護は家族がみるもの」との考え方が薄れ、「老人介護も社会全体で負担する」との高邁な思想に基づき、公的支援を受けた民間の老人介護施設の建設が、急ピッチで進みます。

H氏も脱サラ組の一人で、介護事業の将来性に早くから着目、真面目に事業を伸長させて来た経営手腕を認められ、2年前にメイン銀行の支援もあって「億単位」の投資を行い、「サ高住」市場に参入していました。

介護事業は、介護サービスを指導する「ケア・マネージャー」との関係を始め、社会の中で比較的「公的な役割に近い」部分を担っているとH社長は自負していて、いつもその「遣り甲斐」を私に熱っぽく語るのです。

ところが今回は様子が違っていました。

 

「正直、パートさんがやる気を無くすのも、自分も分かるんです。真面目に働いて、歳を取って幾ばくかの年金を貰っても、果たして生活できるのかと。だから、今のうちに必死で働いて、老後の資金を何とか少しでも貯めておきたいと、一生懸命なのです。」

「多少の売上増になるからと、目先の利益に動いた自分がバカでした。もう役所に保護されている人は、入所させないつもりです。同じ業界でも、それ専門に運営している所もあると聞いてますが、普通の経緯で入って来た人や従業員に及ぼす影響を考えたら、最初から入れなければ良かった…」

「日本の社会保障政策は、間違いなく破綻しますよ。役所の方では、なるべくそういう人達の認定を厳しくしているようですが、NPOや支援団体が、“当たり前の権利”と称して弱者を煽り、どんどん保護者を増やしている。自然界では“自然淘汰”のように“自浄作用”があるけど、苦しまないで楽したい、という人間の欲望にはキリがありません。そういった世の中の風潮が、セーフティネットを破りかけているのに、日本人は見てみないフリをしているだけ。誰も批判を恐れてホンネを口にしない…」

H社長の憤懣やるせない話は、この後も延々と続くのですが、こちらもキリがありません。

介護の現場も「修羅場」のようです…。



コメント

  1. 日本には昔から「恥」の文化がありました。
    他人に迷惑をかけないが第一です、自分が働けないことや病気になっ
    てしまったことも恥と考えていました。
    社会福祉が充実していなかった時代だからと言えばそうなのですが、現代はあまりにも恥知らずが多いのではと思います、社会から恩恵を受けていると考えて自らを自立しようとしないのもあるのかもしれません。
    後何十年かすれば必ずやってくる「老い」自分の時はなんとかあまり社会に迷惑をかけないような老後にと今からの準備が必要なのかもしれませんね。

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