事業再生の現場から

蛸屋総本店の倒産

お早うございます。

昨日(6/25付)の下野新聞朝刊に、小山市に本店を置く「蛸屋総本店」が会社更生法の申請を行い「倒産」したとの記事が掲載されました。

いえっもっと厳密に言うと、蛸屋総本店の「債権者」が「会社更生法」の適用を東京地裁に申し立て、財産の「保全命令」が出された、と言うのが正確な記事でした。

「そんな事、同じだろうしどうでも良いじゃん」と思う方も居るかも知れませんが、事業再生を目指すのに「民事再生法」じゃなくて「会社更生法」、しかも債務者(この案件では蛸屋総本店ですが)自らが裁判所に法的再生を申立てたのでは無く、「債権者」が法的再生を申立てたと言うのが、なかなか奥の深い(私にとっては興味深い)記事なのです。

 

蛸屋総本店は、小山市に本店を置く和菓子屋さんで、取引先訪問や親戚・知人ご挨拶などの折りに持参する「菓子折り」などの利用で、栃木県内に住む人にとっては「馴染みのある」企業さんだと思います。

記事にある通り、(今はどうなっているか知りませんが)かつては、同社の主力取引行は足利銀行であったと思いますし、私も取引先の再生支援を担当する部署におりましたので、直接担当はしないまでも、同社の財務内容等々、ある程度の内容は知っていました。

「良くやっているな…蛸屋」と言うのが、私の此処数年の思いでしたが、遂に「法的再生」を目指して、経営の実態にメスが入るようです。

今までは、債権者主導で事業再生を目指そうと経営者と交渉しても、なかなか思うような「結果」が実現できなかったでしょうから…。

仮に、同社のグループのメイン行が従来のままであった場合、常陽銀行との経営統合により、経営不振取引先の事業改善速度を上げざるを得ない主力行が、現経営陣に見切りを付け、法的手続きによる再生への道筋を着け、銀行主導で再生を仕掛けて行く決断を下したのかも知れません、憶測ですが、良い線を突いていると思います。

 

なぜこんな言い方をするかと言うと…

たぶん蛸屋総本店の社長(代表者)は、このやり方による再生劇を望んでいないと思われるからです。

私が蛸屋の経営者なら、会社更生法じゃなくて民事再生法による再生を選びます。

経営関与度が全く違うからです。

会社更生法では、更生計画作成段階から、裁判所が選任する事業管財人が経営を主導します。現経営陣は、基本的に計画から排除されますし、経営からも退かされます。

監督委員の監視がありながらも、経営陣がそのまま経営を続けられる可能性の高い民事再生法とは、まったく違うのです。

 

いずれ色々な話が耳に入って来ると思われますが、たぶん(銀行介入・主導による)改善を渋る経営者の「わがまま」をいつまでも聞いていられない、とする銀行主導の再生劇の幕が切って落とされたのかな…と。

 

足利銀行は、古い取引先には「石橋を叩いても渡らない銀行」と評されていた時期があると聞きますが、30年前くらい位には「向う傷を怖れない銀行」、バブル崩壊後は取引先支援に懸命な「面倒見の良い銀行」だったと思います。

諸般の事情が「面倒見の良い銀行」では許されなくなったのか、少し気になる処ではあります…

 

 



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