事業再生の現場から

三人寄れば…

文殊菩薩(もんじゅぼさつ)様という、知恵を司るありがたーい仏様にあやかった諺があります。

「三人寄れば文殊の知恵」→一人では良い考えが生まれなくても、三人で集まって考えると良い知恵が浮かぶ、という意味だそうです。

一昨日の話ですが、そろそろ帰り支度をしようかとPCを閉じようとした時、前の席にいるなべちゃん(渡辺)から「ちょっと、この協議書見てってください!」と、X社への貸出(金)協議書を渡されました。

X社は、従来から資金繰りが厳しく、運転資金として100万円を融資している取引先ですが、今回更に200万円の貸増(かしまし)案件です。

資金必要事由や使途(使い道)は理解できるとして、問題は返済(当社にとっては回収)が可能かどうかです。

今回の追加融資分の返済方法は、X社の売掛金を当てにした短期一括弁済型では無く、長期(と言っても20回払ですが)分割返済、つまり今後の事業収益で返済しようというものでした。

なべちゃんは、ウチに入社する直前まで銀行審査部の次長をしてましたので、訳もなく案件をあげて来たりはしません。相応の理由があるのです。

元々X社には、親会社とも言うべき母体企業(Z社)がありました。

老舗企業のZ社は高度成長期に急成長し、地元の優良企業としてそれなりに羽振りも良かったのですが、日本経済の衰退と伴に業容縮小を余儀なくされ、最終的には廃業する事になりました。

が、Z社の社長夫妻は「これからは加工技術がモノをいう時代が来る」との読みで、息子さん達のステージ(X社)を用意していたのだそうです。

X社は、Z社の後ろ盾もあって順調に業容を拡大し、某自動車メーカー開発部門から取引先に指名される等、外部からの技術的評価も進んでいましたが、Z社の経営不振やリーマンショック以降の景気後退で業績が著しく悪化し、今では市中銀行から資金調達する事が難しくなっているのです。

ただこの会社の良い処は、「社員が15人くらい居るんですが、いゃー皆20代~30代前半と若くて、元気があるんすよ。今時この業種でこんなに若くて技術力のある会社は他にないから、これからが楽しみなんですよ。」

「今度X社の若さとやる気を見込んで、新規取引先Y社が機械を新しく設備してX社に貸与する好条件を出してまで、発注して来たんですよ。若手で頑張ってるからって、周りが結構応援してくれてるんですよ♪」 ☜いずれもなべちゃん談

「でも、そうは言っても保全が何かないの? 今の100万円だって実質根貸(資金繰りに組み込まれて返済できなくなっている貸出)だろ? なんか担保になるものないかなぁ?」 ☜実は私の案件判断は「塩辛い」のです。普段はふざけてばっかりですが(笑

「手塚、なんか意見ないかい?」 と私。

「案件、見させて貰って良いっすか?」 真面目な手塚クンが協議書をペラペラ…。

三人で、条件、回収可能性、X社の将来性等あれやこれ、5~6分くらい相談していた時、

「そうだ!売掛金を担保に出せないか? ABL(動産=売掛金等担保融資)ならやっても良いんじゃない? 金額も500万円くらい枠を付けてあげれば、これから資金繰りに汲々とする事もなくなるだろうし…。」

「ただうちは銀行なんかより高金利だから、あまり当てにされちゃうとX社自身がダメになっちゃうからね♪」

我ながら良い知恵が浮かびました!

落とし所は決まりました。 私は印鑑を押して佐藤(社長)の机に協議書をポンッ!

翌日「あらあら売掛担保でやるの♪」と言いつつ、佐藤もポンッ!☜基本あまり深く考えないタイプね、彼は(笑。

これで決まりね。

 

 

 

 



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