事業再生の現場から

介護現場の悲鳴

借入金返済金額の調整が必要になり、取引先で介護事業所を営むA社長と一緒にメイン行を訪問して来ました。

政府による介護報酬削減の流れは、平成28年度になっても続いているそうで、A社長の経営する介護事業全体の収入も昨年同期比で10%近い減額になっています。

前年対比収入が10%近くも減額される一方、介護現場での「人手不足感」は深まっているそうで、「欧州の混乱で国内景気が足踏みでもしない限り、介護現場の人手不足は解消されないだろう」と社長は仰います。

景気回復の腰が折れるようであれば、増加し出した「税収」が減り、介護政策に振り向けられる予算も更に減額されそうなものですが、どうやらA社長は違う感覚で物事を考えているようです。

 

「村上さんに聞くけど、生活保護を受けてる人とそうでない人ではどっちが幸せだと思う?」社長は私に尋ねます。

「普通に考えれば、そりゃあ生活保護を受けてない人の方が幸せなんじゃないですかね、だってそれなりの収入や資産があるって事でしょうから…」私は答えます。

ところが…「私が観たところ、本当に幸せなのは生活保護者の方だよね。うちの入所者(サービス付高齢者専用住宅)の半分は生活保護受給者になっちゃったけど、残り半分の人達は大変だよ。自分の年金と家族がおカネを出し合って、入所させているんだ。家族は生活費を切り詰めるだけ切り詰めて…。自分の親の寿命がいつまで続くか分からない、この先いつまでこの生活が続くか分からない状況でね…」

「生活保護受給者は、その点気楽なもんだよ。国が一切合財面倒を見てくれる…。そういう現実を見ていると切なくなってくるよねぇ。ただ、うちも生活保護者を受け入れて行かないと経営が成り立たないのも事実だから…」

 

A社長の経営するサ高住に入所する人で、生活保護受給者は2年前まで3人しかいなかったそうです。

それが今や20人規模にまで拡大したそうですが、A社長のホンネでは「自立のため努力している老齢者やその家族」を優先して介護したいらしいのです。でも「経営」が絡んで来るとそうも行かず…ジレンマと言うか腹立たしさと言うか、切なくなるのが常だと、私に訴えます。

 

うーんっ、難しいですね、福祉は。

福祉は弱者のための社会的コストとは言え、真面目&誠実に頑張った人が相対的に「幸せじゃない」と言われてしまう社会って、どうなんでしょう???

誰もが納得できる解決策ってあるのかなぁ。

 



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