事業再生の現場から

半沢直樹的…③

前号からの続き…

DDSの申し入れに対してメイン行の反応は「予想通り」冷淡なものでした。

「最大限譲歩してもリスケ(条件変更)で業績改善を待つお手伝いだけですよ」と。

この回答を予想していた私達は「銀行支援が得られない」事を理由に、債権者同意が無くても「自力且つ自己責任」での再建策案Bを実行に移す事を決めました。数か月前からこの事は想定してましたので…。

が、実行直前になって社長が「亡くなった親父が夢枕に立った…」と言い出したのです。

Bプランに緊急停止の指示です。

銀行に逆らってでも「強引に」自力再生をキックオフしようとしていた矢先でしたので、私を始め関係者は一様に「なんで?」と急ブレーキが掛った事に失望し、社長の決断を非難する声さえ出兼ねない空気感も漂ってしまいました。

その時はこれが後々の「英断」となる事に気づいた人は、私を始め誰も居ませんでした。

「親父が夢に出てきたと言う事は、銀行さんと誠実にもう一度話し合ってみろ! そういう事だと思うんです」と社長。

最終決定者が、そのような考えに変わった以上、私としては「クライアントの決定」に従って最前の方法を捜し、実行に向けて関係者の合意を獲得して行くしかありません。

メイン行に再度出向き、「債務免除orDDSがダメならプランBを選択するつもりでいた事」「債務超過が重く取引先からの具体的改善策を求められている事」「メイン行の具体的支援獲得が求められている事」を正直に話し、①年間収益力で償還できない部分の借入金返済額の軽減、②短期資金の恒常的な支援確約、③プロジェクト資金融資の金利引き下げ等々を求めました。

結果、1年間の元金返済軽減(但し短期資金支援は極力回避)、プロジェクト資金の大幅金利引き下げ(引き下げ幅1.50%)でメイン行との話し合いに合意しました。

相手方が短期資金支援に難色を示したのは、既に話し合いを始めた時点でQ社は「返済財源」としてメイン行と約束していた売掛金を回収していたため、当面自賄での資金繰りが可能だと判断されたためでした。

金利引き下げだけでも年間5,700千円の増益効果があります。

そして前期の決算。

金融緩和の影響による円安効果で企業の設備投資意欲が盛り返した事や消費税増税前の駆け込み需要もあったせいもあるでしょう、増収・増益+他の自己資本対策も奏功し、一気に自己資本を充実させ「債務超過」解消となりました!(^^)!

売掛金回収にも心を砕き、この間銀行からの借入実績は0です。

つまり一度も借入する事なく、資金繰りを回した事になります。

これで一番恐れていた「債権者事情の変化による格付変更」リスクは、相当遠のいたと思います。

「腹を括ったのが良かったんですね」社長がぽつりと言います。



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