事業再生の現場から

黒字倒産③

一昨日の続き…。

事の発端は、西日本の某銀行での割引がダメ出しを喰った○○社発行の手形でしたが、当月○○社へ買戻を求められた金額が数十万円でしたので、○○社長はその深刻さを認識していませんでした。

ところが翌月の支払日になって、○○社の取引先が一斉に「支払条件の変更」を○○社に要求して来たそうです。

従来○○社は、商品仕入資金を現金40%・手形60%の割合で支払っていましたが、取引先は○○社の手形が「割り止め」を喰った事を“風の噂”で知ったのでしょうか「できれば全額現金扱い、最低でも現金手形の割合を8対2にして貰えないと取引できない」、中には「手持ちの手形を買い戻して貰いたい」と強硬に請求されたケースもあったと聞きました。

仕入先からの商品提供がないと○○社は売るモノが無くなり、事業を続けて行く事ができません。

そうこうしている間でも、従業員給与や様々な経費が毎日発生してきます。

事ここに至って○○社長も事の重大さに気づき、メイン銀行を始め付き合いのある銀行からA社の取引銀行(A社長の紹介)、政府系金融機関を行脚して運転資金調達に奔走したそうですが、既存借入を条件変更中という事もあって金融機関の支援がなかなか得られません。

「良好な関係を維持している」と豪語していたメイン銀行からも、「雨が降っているのに」傘を貸して貰えなかったそうです…。

結局、手形が返された翌月は現金支払分を上積みして仕入業者の協力を得、商品供給を延ばして貰ったそうですが、これまで何とか維持して来た資金繰りは、いよいよもって“逼迫”して行く事になったようです。

そして手形が返された2か月後、今後の資金繰りの目途が着かなくなった事を理由に、○○社長は廃業を決断したのだそうです。

私がお邪魔した時に見せて頂いた直近の決算書&今期途中の試算表は、確かに黒字転換を果たしており、資金繰りさえ上手にやればこんなに早く破綻するような企業さんでは無かったと思います。

ただ惜しむべくは、損益が黒字でも、貸借対照表上の「流動比率」が100%を大きく下回り、当座資産も脆弱だった事の対策をもう少し真剣に考えておくべきでは無かったかなぁ、とその点が残念でなりません。

私の知人A社長は「割り止め」騒ぎと前後した頃、しっかりと○○社の在庫に担保設定していたようで「実害」は発生しなかったとのこと。

その点は安心しましたが、今後も景気回復が進むに連れ「増加運転資金」需要に耐えられない企業が続出するのではないか…。

少し心配です(ToT)



コメント

  1. 山田の案山子 より:

    良く有りそうな話です

    キャッシュを簡単に考えていたからなのでしょうか?

    危機管理が足りなかったのでしょうか・・・

    小さな綻びが決壊に至ったダムのようです

    経営はやはり細心の注意ですね

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