事業再生の現場から

ファクタリングに群らがざるを得ない理由②

前回の続き…

一回の手数料で数パーセント~20%も取られるファクタリングより、貸金業者が行うABLの方がコスト的には割安であり、それなら誰でもABL事業者の門を叩く方が「お得」でありそうなものですが…

知人によると「ファクタリングを脱却してABLで資金調達したい」との希望者は”後を絶たない”のだそうですが、問題は前談でも触れた「融資審査」を行う上で必要な疎明資料(エビデンス)を依頼者が準備・用意できない事にあるそうです。

融資審査を行う側からすれば(後日監督当局から監査・指導が確実にあるので)、必要最低限に絞っても「こういう根拠があって合議審査のうえ融資実行をいたしました」と言えるだけの書面に残る資料が不可欠です。

それは「試算表」「資金繰(実績・予定)表」であったり「売上見込み」を示す「業務受注(予定)表」であったり、直近の売上入金実績を示す「口座異動明細」であったりします。

中には、他行から借入ている融資残高を毎月レベルで報告して欲しいとする業者もあります。

銀行まで細かい資料とは言わないまでも、ノンバンクでも貸金業者の融資審査には一定レベルの裏付資料が必要となります。

それらを短期間(そもそも依頼者は早く売掛金を現金化したいので相談に来ています)に用意して貰えないと審査に入れないのですが、その必要資料をお願いした段階で、以降の「連絡が取れなくなる」依頼者が多いのだそうです。

そしてそういった依頼者の多くが「手続きが簡便だから…」という理由で、ファクタリング業者へ売掛金買取を持ち込む構図が続いているのだとか…。なるほど。

 

それからABLの彼が言うには「コロナで政府が支援した”換価猶予”も影響している」ようです。

消費税などの国税や地方税、また年金・社会保険料等の換価猶予は、コロナ禍で売上急減した事業者が届け出ると基本的にはその納付期限が猶予され、後日の回復を待って納付計画を相談しましょう、との流れになっています。

コロナ禍の影響下にあった期間が2年超の長きに渡ったため、換価猶予され膨れ上がった税金・社保料等の回収が急がれており、売掛金を売ってまで「早期に納付するように」という指導がなされているとも聞きます。

「換価猶予分の納付がこれ以上遅れると…売掛金の差押も」こんなことを担当者に言われたら、事業者としては居ても立ってもいられません。

其くして彼の言うように、事業者の唯一の財産「売掛金」を何とかして現金化して事業継続を模索して行くという中小企業事業者の金融業者詣でとなります。

 

もちろん、コロナ禍の影響があったとは言え、金融機関との信頼関係が深くコミュニケーションが取れている事業者には、取引銀行・信金信組が手厚くサポートしてくれるので、ABL業者やファクタリング業者へ相談に行く事は無いでしょう。

問題は、銀行との関係が円滑とは言えず、ノンバンク等にむ頼らざるを得ない環境にある中小零細の事業者です。

手数料という名の金融コストに体力を蝕まれ、更に経営体力が削られて行くそれら事業者に改善の途はあるのか…ここが考えどころですよね。

 

 

 

 

 



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