事業再生の現場から

金融円滑化法の後に⑥

社長さんの話が続きます。

「村上さん、ちょっと息子を呼びますので、奴の考えを聞いてやってくれませんかね?」

内線電話で呼ばれて、30代後半と思しき好青年(社長の長男=常務取締役)が登場。

技術者として身を立てた社長と違って、技術系の同社にありながら、大学は法学部の出身だとか。

元々家業を継ぐ気は無かったようですが、数年前社長さんの健康問題が社業に影響しそうになった時、ご両親断っての願いで勤務先を退職し、後継者含み(社長さんの感覚ではこういう事らしいのです)で、役員に登用されたのだそうです。

お話を伺ってみると、論旨明確に「事業承継」しない理由を述べられます。

ご長男の仰る内容を、社長さんや母上、銀行筋等が理解するか否かは別として、「なるほどそういう考え方もありかな?」と私自身考えさせられる内容です。

常務臼く、「確かに両親も僕達兄弟も、この会社のお蔭で生活をさせて貰う事ができました。その代わり、親父達はモノ作りで世の中に貢献して来たとも言えると思います。その会社を支えて来てくれたのが(メインの)銀行さんだって事も分かっている積りです。でも、仮に僕がこの会社の経営を受け継ぐとして借金の“連帯保証人”になる事が条件だとしたら、銀行さんには悪いけど、僕は別な場所で起業する事を考えますよ。だって、銀行さんはこの会社にお金を貸したんであって、僕が借りた訳でも無いし保証もしてないんですから。」

社長さん「それは屁理屈と云うもんだ。そんな話が世の中通用するもんか。銀行に不義理したら、うちなんか直ぐに倒産だぞ!」

常務「連帯保証人は親父だけ。自宅は数年前に親父が倒れた時にお袋名義にしてあるし、担保にも入れていない。会社は貸工場の賃貸で、今時借り手なんか無いのだから、貸工場なんて選びたい放題だよ!」

社長「不渡なんか出したら、何処(の取引先)が相手にしてくれるんだ?」

常務「馬鹿だな親父…。だから世の中、返せもしない借金猶予策で円滑化法ってのがあったんだよ。それが3月いっぱいで無くなるって事は、俺たちがアタフタしてもしなくても、銀行からいずれ“引導を渡される日が来る”って事なんだよ。一度リスケした先で元の返済条件に戻せるのは10%も無いらしいよ。」

なんだか、親子喧嘩の様相に…。(次回に続く)



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