事業再生の現場から

窮鼠猫を噛む②

銀行っていうのは「信用第一」が社是で、世間の評判や監督官庁からの評価を「もの凄く」気にする組織です。

ですから世間様を驚かせるような「不正」や「疑惑」等スキャンダルに相当しそうな「事件性」ある出来事を凄く嫌いますし、当然そんな事態に陥らないよう普段からの「リスク管理」が徹底しています。

警察OBを採用して「反社会勢力」対策を講じている銀行もあります。

今は若干違って来ているのかも知れませんが、一般的に言って昔の銀行人事考課は「加点主義」より「減点主義」に軸足を置いていたと思います。これは職員が絡む「事故」や「不正」は銀行の信用を貶める事象に直結するので、これを抑止する必要があって「キミタチね、何か問題を起こしたらペナルティで昇格が遅れるよ!」と云う意思を明確に示していたのだと思います。

その背景を考えてみると「なるほど、そういうことね」となるので、ちょっと私なりの考えを書いてみますね。

銀行の自己資本比率(自己資本÷総資産)は、メガバンククラスでも、せいぜい15%程度です。

10兆円の資産を持つ中堅銀行で仮に自己資本比率が15%なら、自己資本(資本金+剰余金等)は1.5兆円(超優良銀行♪)。

総資産のうち残る8.5兆円は、殆どが不特定多数の顧客から預かった預金です。

預金者は気まぐれですから、預入していた銀行に何事かマイナス情報でもあれば「すわっ…」と預金払戻に動きます。

足利銀行もH9年11月の長銀・拓銀破綻時に「預金取付」騒ぎがあり、私自身もパニックに陥った群衆を目の当たりにした事がありました。

10兆円の運用資産を持つ銀行は、融資や投資(国債や為替ディーリングや証券商品等)で利鞘を稼ぎ、どうでしょう年間1,000億円くらい稼ぎ出す事ができるでしょうか?(地銀トップの横浜銀行が預金11兆円で業務粗利1,200億円くらいですから、こんな感じですかね。但し横浜銀行の自己資本比率は7%未満ですけど)

年間1,000億円も稼ぎ出す銀行でも、商売の元手(原資)となる資金の大半は、顧客からお預かりした預金です。

信用が失墜すればたちまちにして預金が引き揚げられ、数千人に上る社員を養って行く事も、事業基盤も維持できなくなります。

ですから、銀行は何より「信用」を大切にするのです。

企業イメージ向上を狙って莫大な広告宣伝費を使ったり、環境事業や文化事業に協力したり、地域活動等に協力するのも「信用力」維持・拡大が究極の目的だと私は認識しています。

それなのに…

融資管理において、過度に顧客を追い込む行為は「自らの首を絞める」事に繋がりはしないかと、老婆心ながら心配しています。

過ぎたるは猶及ばざるが如し…。

 



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