事業再生の現場から

事例集④-④

収益物件である貸ビル2棟をリニューアル費用込15,000万円で取得したT’社は、半年もしないうちにビルテナントを次々に獲得、現在2つのビルからの家賃は800万円程で推移しています。

税金や諸費用を考えなければ、投資利回りは年64%とウソみたいな数値です。

保険料や固定資産税、修繕積立金等々を考慮すれば相当数利回りは落ちますが、それでも年換算で50%近くは行くと思います。

他人の財産をどうのこうの言っても仕方ありませんが、この再取得は大成功の部類に入ります。

後の所得税の問題等は、T’社やT元社長が考えれば良いので、勝手にやってよ(笑)ですね。

ところで、買い戻した2物件以外の3つの物件は低層且つ裏通りに建つ貸ビルで、案の定と言いますか、メイン行が競売に附しても競落されず、そのままサービサーの手に渡る事になりました。

サービサーには28,000万円もの融資残が譲渡されましたが、T社及びT社長はこの3つのビルから入る僅かな賃料も弁済に充当することはありませんでした。

債権者もビルの店子(賃借人)が四六時中入れ替わる飲食ビルの特性に手を妬き、抵当権の物上代位による賃差も実効性を挙げられないのです。

T社長と伴に東京のサービサー本社を何度か訪れ、競売による物件処分を続けて構わない事や、いずれT社及びT社長も法的手続きにより清算する方向にある事を申し入れました。

だって「返して貰わないと困る」と言われたって、「無い袖は振れない」のですから(笑)

T社長が交渉する事数度、私からも「そろそろ出口を捜しますか?ノンバンクに渡りを着けましょう!」とアドバイスします。

実は残る3物件についても、水面下でノンバンク側に資金調達を依頼し、概ねGOサイン出る所まで話を詰めて置いたのでした。

担保物件の具体的処分方法が見つからず困っていたサービサーは自社の決算間近との事情も重なっていたのでしょうか、T’社が提示する価格での3物件買取に同意し、併せて残債務27,000万円(利息入れると30,000万円以上の借金)を数百万円でT’社に譲渡することにも合意してくれました。

この資金はノンバンクから借入(リニューアル資金も上乗せして結局3,000万円を借入しました)してサービサーに一括弁済、同時にT’社は3物件のリニューアルに着手、当初はこの3物件からも月額50万円の家賃を得ていましたが、先週T社長に聞いたら今は80万円になったそうです(笑)

こちらは諸経費控除前の利回りで32%で、T社長にとってそんなに「オイシイ」投資と言えないかも知れませんが、何より第一から第五までの5つの貸ビルの全部が人手に渡らず、T氏一族の管理下に置ける事が実際にできた、という点で「成功した事例」であったのではないかと思います。

因みにT’社の株主は、今後の相続や経営権維持の問題等、将来起こり得る可能性をぜーんぶ網羅して慎重に名義を割り当てていますから、T社長の場合、一世代後の事を考えれば良くなったとも言えます。

お金持ちは常に税金対策を考えねばならず、その点お気の毒ですがね(笑)

 



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