事業再生の現場から

JV悲話②

昨日の続き…

私の担当するA社は、売上規模が10億円に満たないながら、地場では準大手クラスの土建屋さん。

昨年、全国規模で土木工事業を展開するM社と、地方自治体が発注する土木工事を共同で請け負う事になりました。

所謂(いわゆる)、JV受注ですね。

後でA社長に「どうしてM社と(JVを)組んだのですか?」と聞いたのですが、「協会(建設業協会)から、M社がJV先を捜していると聞いたので、手を挙げたんだ。」と言う事でした。

当初は「大型工事が取れて良かった!」と喜んでいたA社ですが、たまに私が「JV工事の進捗は順調ですか?」と水を向けるようになると、一転して社長は“苦虫を噛んだような”表情に…。

「実は、現場の段取や支払についてM社の対応が不味く、うち(A社)が相当支払を被っている。当初契約時の条件での支払が遅れているんだ。そんなんだから現場も遅れ気味で、役所にも説明に行かなきゃ行けないのに、(M社の)工事責任者の対応も鈍くて困っているんだ…。」

「そうですか…。私なりにM社を調べてみますね。」

事務所に戻って早速、M社の調査書をTDB(帝国データバンク)ネットから手配、すると…。

A社がJVを組んだ相手M社は、売上的には全国的に急成長している様相であるものの、「特記事項」には下請先への支払に関してトラブルが絶えない事、訴訟に至った事案にも事欠かず、要因は分からないながら自治体からの指名停止が頻発している事等、「これで良く新規受注が取れるよなぁ…」と思わせる内容がずらり。

折良く、事務所に遊びに来ていた(笑)銀行時代の先輩で、M社と同じ地域に営業基盤を持つ建設会社の役員を務めるBさんに

「この会社知ってますか、Bさん? 私の担当先がこことJV組んじゃって大変な様子なんです…。」

「こいつは業界じゃ有名な会社だぞ。下請なんか入ると支払いをとことん延ばされて大変な事になっちゃう。うちの近くではM社の下請やJVなんて組む奴なんて一つもないぞ。相当腰を入れて回収に掛からないととんでも無い事に…」

と、B先輩のアドバイスをA社長にお伝えして、約半年。

途中渋るM社の本社経理部に乗り込んだり、現地支店長を掴まえて支払を約束させたり、A社の努力は続きましたが、やっぱりと言いますか、ついに最終金の支払の段階になってM社に変化が生じつつあるようです。

A社長は「とんでもない奴だ。役所の手前大人しくしているが、何としてでも回収してやる!」と強気ですが、M社は現地支店長(A社との連絡窓口)が病気退社したと言うし、本社に掛け合うと「どうぞ、訴訟でも何でも起こしてください。」との態度だと言うし、A社の未収金は経営の屋台骨を直ちに揺るがす規模ではないものの、貸倒に終るとボディブローのように効いてくる金額だし…。

結末はどうなるやら。

「JV取れた時は嬉しかったが、やっぱり簡単に一見(いちげん)さんを信用してはいけなかったのかなぁ…」とA社長。

悪いのはM社なのに…。



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