事業再生の現場から

個人保証

法務大臣の諮問機関である「法制審議会」が、民法の一部改正を前提に素案を纏めつつあるとか。

昨日の新聞で書かれていた「見直し内容」の中で、私達にも関連があり且つ一番インパクトが大きいと思われるのは、金融機関等からの借入に「第三者保証」を認めない、という項目でしょうか。

中小・零細企業融資に関して、経営者保証は別として、(第三者からの)個人保証を失くす方向で議論が進められているとの事です。

個人保証廃止の是非について、「保証人になってしまったため人生を棒に振ってしまったので、廃止には大賛成だ!」とか、「欧米では企業融資に個人保証が条件なんて有り得ない、当たり前の改正で、寧ろ遅いくらいだ」とか、「個人保証制度を廃止するとなると、銀行が中小企業融資に慎重になるため、ベンチャー企業が育たなくなってしまう!」とか、各界から様々な反応が出ているようです。

私は、第三者保証が無くなったから銀行が融資を渋るなんてことは、起きないと思います。

ただ現実問題として、経営者にとって「第三者」(友人・知人、親戚・取引先etc)には「迷惑を掛けられない」から、その借入を他の借入に先駆けて(優先)弁済する、と云う行為や気持ちは、現場で何度も見聞きしています。

債権者(金融機関等)の立場になってみても、審査基準として「有力保証人付融資」と言えば、“取り上げ理由”としては充分な事由になるでしょう。

ただ、それ以前に融資の可否を判断する前提として、「融資金がどのように使われ、その後経営にどのような効果をもたらし、約束の期限までにどの原資を持って返済できるのか?」を審査担当者は考えますから、「保証人が有力者」だから融資を可とする、という考え方は「銀行」においては殆ど無いと思うのです。

(まぁ、銀行も株式会社で営利企業ですから、「儲かりゃなんでも良い!」との考え方もアリは有りですが…。)

それに、回収をやっていた立場から言わせて頂きますと、「有力保証人」からの回収を試みる時、有力保証人たり得る人は、その地域等で力を発揮されている方が多いので、結構先方に気を遣いながらの折衝・行動になるケースも多く、余計なエネルギーまで使う事になって“クタクタに”なったものでした。

問題の融資取引そのものは、債権者VS連帯保証人で銀行が負ける事はないのですが、「江戸の敵を長崎で…」なーんて保証人さんに考えられた日には、何処に飛び火するか分かりませんからね。 銀行ったって“客商売”で、何より世間の評判が「信用」に直結するのですから、第三者保証人に納得して貰えるよう(回収は)慎重にならざるを得ません。

回収の現場では、これが結構悩みのタネになったりしますからねぇ。

回収担当者から「融資する時は慎重に考えてやれよ!」と詰られたりする事もあって、安易に“保証人本位”で貸す風潮は、今の銀行屋さんには無いと思います。

要は、個人保証があろうがなかろうが、“本質的な部分”でペケなら「融資」はダメなので、ベンチャーが育たなくなる云々は、「融資」ではなくて「投資」が、どう捉えるかの考え方だと思います。

「(第三者の)保証が付いた事で銀行から資金調達でき、大成長を成し遂げる事ができた」と云う成功談は、今の時代なかなか起こりそうもない事、なんだと思いますがねぇ。

 



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