事業再生の現場から

社員に倒産確率を知らせるという事③

ブログネタを探して、過去の記事を見ていたら…

ちょうど1年くらい前に、星野リゾートの星野代表がグループ従業員に対して「自社の倒産確率」をオープンにして、社員の奮起を促す試みを展開している事に関して、自分なりの感想等を投稿していました。

標題は「社員に倒産確率を知らせるという事①②」という記事です。

今日は、“三匹目のドジョウ”を狙った訳ではありませんが、会社の財務情報を(社員に対して)最終利益まで毎年開示している取引先Y社の事例について、少し書き進めてみようと思います。

 

Y社は五代続く会社で、社歴は優に100年を超えた「老舗」と言える事業体だと思います。

昭和40年代の高度成長期には従業員も20人を超えるほど居たようですが、現在は7名で堅実な経営を続けています。

高度成長期には面白いほど儲かったと聞きますが、支出も多く、先代社長の時代には銀行からの借入金も嵩み、現状では金融債務が年商に匹敵する規模にまで膨らんでしまっています。

赤字による資金不足を補填するため、銀行の提案に乗って、結果として利益償還できる能力以上の借金を背負う事になったのです。

現社長(40台)になってから今年で6期目となりますが、社長の奮闘の動機は「親父が残した銀行さんからの借金返済」一点に絞られるかと思います。

プレイングマネージャー(選手兼監督)として、とにかくよく働く社長さんです。

 

こんなY社ですが、数年前から、私の提案で「決算確定後最初の営業ミーティング時に前期決算内容を全社員に開示する」事を定例化するようになりました。

きっかけは、社員給与の改定(引き下げ)でした。

営業系の会社なので、社員一人ひとりの売上・利益が実績として管理し易く、「誰が幾ら会社に貢献したのか?」がハッキリしています。

社会保険労務士のアドバイスを受けながら、社員一人ひとりと面談を繰り返し、数年前に社員給与カットを含む大リストラ策に、社長がGOサインを出したのです。

私も社員さんとの面談に同席させて貰っていますが、「会社の赤字体質を改善しないと、いずれ資金不足で事業継続が困難になる。もちろん役員報酬も皆さん以上に削減する。利益が回復して軌道に乗せる事ができたら、給与水準も現状に戻す事を約束するので、給与削減に協力して貰いたい」こんな趣旨で、社員の協力を得て経営改善に乗り出したのでした。

 

それから約束を守って、毎期初の営業ミーティングでは私が作成した年間損益推移表をベースに、全社員を前に社長が「改善が達成できた項目」「課題が残った項目」等々についてコメント、個別面談では営業実績にスライドする形で当年度の給与水準変更の話も進みます。

お蔭様で。

3月決算では、前々期・前期を上回る営業利益が確実に上げられそうです。

この仕組が始まって、会社を去った社員が1名います。

ですが、1名減でも、会社全体の売上は減少前の水準以上を維持しています。

中小企業の経営改善計画実行においては、従業員の協力が不可欠です。

何故あの時点で従業員給与というアンタッチャブルに近い聖域に手を付けざるを得なかったのか、今残っている 7名の社員は良く理解してくれていると思います。

 

 

 

 

 



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