事業再生の現場から

この道はいつか来た道…とならないように

デジャブ現象という言葉があります。

一度も経験した事が無いのに「過去に同じような経験をした事があるように感じる事」を指すそうです。

既視感を感じた事とでも言えば良いのでしょうか。

反対に「ヒトであるがゆえに」事の成否に関わらず、同じことを繰り返してしまうこともあります。

歴史は繰り返す、とも言いますね…金言です。

 

最近、金利のある世界に戻ってから、金融機関の取引先に対する融資姿勢が変わって来たように思えます。

中には飛びぬけて熱心に「融資」に取り組んでいる金融機関があり、弊社の取引先の中でも、目に見えて業績改善の目覚ましい企業に対しては「思い切った条件」での融資セールスを展開しています。

それも設備投資や新規の運転資金需要に対応しようとするもので無く、結果的に既存借入金の「借換」に充当する資金を提供するという形での「融資提案」なので、既存取引行としては融資残高を「肩代わり」されてしまうような形になります。

実例を挙げると、売上10億円・経常利益43百万円の直近決算(自己資本は+68百万円=経営改善計画の3年目)実績ある取引先(製造業)に対して 50百万円の信用貸出を提案して来ましたが、これは先月(5月)に新規実行となりました。

この会社は2億円超の借入金があり、業績不振の期間、ほぼメイン行が一行で支援して来たのですが、ここに来て新規取引獲得に飛び込んで来た銀行に、貸出金の1/4を持って行かれる結果となりました。

その融資条件も(私からしたら)破格で、年利 0.60%の「当座貸越」方式での貸出でした。

金融機関との間にコミットメントラインを締結する融資方式である当座貸越は、必要な時に「与信枠」の範囲で必要な金額を引き出せるとても利便性の高い、しかも不要な時には適宜残高を減額する事も自由にできる(要は金利負担を軽減し易い)、借り手にとって使い勝手の良い借り方(融資)だと言えます。

契約の期限到来までは「出し入れ自由」ですし、個別借入時の印紙代も掛からないので、その点も借り手にとって魅力ある商品だと思います。

 

且つてバブル経済期にも、盛んに「当座貸越」を顧客に売っていた時期がありました。

上記のような顧客側のメリットを全面に押し出し、他行肩代わり融資の推進に使っていたのです。

その結果というか、決して当座貸越が悪者だという事ではないのですが…

その後、金融引き締め時期になり「枠を設定して与信を供与するという与信判断はNG」という風潮から、当座貸越の期限延長はその多くが認められず「証書貸付」へ切り替えたうえで約定弁済を課せられ…という時代が来ました(>_<)

自由に出し入れできていた当座貸越機能が使用停止になり、期限到来になった時点で残高確定となった融資残は証貸に引き継がれ、長い間債務者の長期借入金に居座る事になり、財務悪化の張本人的な扱いを受けて来た歴史を持っています、当座貸越にはそういう暗い過去がある融資商品という印象を私は強く持っています。

今回は破格の金利でしたし全体の25%程度でしたので、最終的には社長の判断と賛同しましたが、業績悪化すると当座貸越機能の延長はたぶんNG、資金使途が自由で出し入れも自由な当座貸越を使う事で、会社の資金管理が多少緩くなることもあり、当面は横から小姑のように口出ししようと思っています(笑)

金融機関からの甘い言葉には要注意です、これは昔も今も変わりません(笑)

 

 



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