事業再生の現場から

「正常な運転資金」という考え方

取引先W社は、仕入れた材料を加工し(製品化するという)付加価値を着けた生産物を販売するという事業を行っています。

業種については聞かないでください。

先週久し振りにW社を訪ね、前月末時点での試算表を見ながら直近の業況について、W社長とミーティングをして来ました。

「あっそう言えば村上さん、変わった事があったんだよ」W社長が口火を切ります。

「D銀の〇〇代理(メイン行D行の担当者)がやって来て、正常な運転資金がなんたらかんたら…言い出してさぁ。なんか今まで返済付で借りていた融資から、定例返済の無い融資形態に切り替えるのがどうこう言ってたよ」

「もしかして、約弁付の長期借入金を短期の手形貸付か何かに切り替えるっていう提案ですか?」と、私がお尋ねします。

「うんっ、そんな事を言ってたっけな…なんでもどんな業種でもできる訳じゃないそうで、売掛金や在庫が比較的多い会社に適合するとか、しないとか言っていたような気がするよ」

「今まで“仕入資金だっ”て言ったって、なんでもかんでも長期運転資金で5年分割返済だーって言ってたD行なのに、急に“短期で出しましょう”なんて気味が悪いよね」とW社長。

 

前期決算時点におけるW社の「正常な運転資金」は、約 5,000万円です。

売掛金+棚卸資産ー(買掛金+短期借入金)= 5,000万円 ざっくり言うとこんな感じです。

D行の提案は、長期借入金の残高に比べて圧倒的に残高の少ない(現在 2,500万円程度)短期借入金の残高を、理論地上「正常な運転資金」だと言える7,500万円まで増やして差し上げましょうか?と言うもののようです。

とは言え5,000万円をまるまる新規融資で貸すんじゃなくて、新規融資は2,000万円、長期借入金からの振り替えが3,000万円との提案です。

W社にとっては、“真水の運転資金”を2,000万円ゲットする他に、長期借入金の3,000万円減少で、その分の約定弁済額50万円/月が無くなりますから、資金繰り上のメリットは非常に大きいものと言えます。

「なんなんですかねぇ、D行の対応は…!? あれだけ“融資金の資金使途は紐付きで。資金使途が明確でないものは分割返済になりますから!!金融庁の指導ですから!!”と言っていた銀行が、また昔の基準に戻すって事でしょ? 全く銀行さんってのは、自分でこうしたいって言うのが無いんですかね… なんでもかんでも御上の言う通りだなんて」嘆き口調ながらも、手元資金が潤沢になる提案を受け、満足げに話すW社長を尻目に…

 

「不良資産は勘案しないんだ…緩くて良いけど(笑)」

猫も杓子も「正常な運転資金」は約弁無の短期融資で…、の風潮に少しだけ違和感を感じます。

でもまっ良いかぁー、銀行さんの出しっぷりが良くないと、中小企業は困っちゃうしね♪

 

 

 



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